
「EXPESTS(エクスペスツ)」は、野菜や稲に発生した病害虫の写真を投稿するだけで、病害虫の名前を特定できる病害虫診断アプリ。2021年にリリースして以降、圃場で本アプリを活用する農家さんが右肩上がりに増えています。また、昨年には、さらに農業生産者のみなさんにとって使い勝手のいいアプリにするべく、診断履歴の保存・確認機能と農薬検索機能を追加しました。
本記事にご登場いただくのは、栃木県内でトマトを生産している2人の若手農家さん。「エクスペスツ」を試用した感想を語っていただくとともに、栽培におけるこだわりや地域の農業にかける思い、今後の展望をお話いただきました。
篠原貴大さんは農業大学校を卒業した後、アメリカでの農業研修などを経て、親元で就農しました。現在、篠原さんがお父様とともに運営する「とまとのしのはら」では、大玉トマトを中心に栽培。これに加えて中玉トマト「フルティカ」、ミニトマトの「アイコ」「イエローミミ」「オレンジパルチェ」を栽培しています。
圃場の面積は全部で64a、栽培が始まる初夏から秋口にかけては、日々、農作業に追われるそう。
「僕が就農する6年ほど前まで、父がほぼ一人で農場の管理をしていました。日々、膨大な作業をこなす必要があるため、どうしても作業が遅れがちになっていたよう。圃場で病害虫が発生しているのを見つけたのに、すぐに防除作業に取りかかれず、病害虫が広範囲に広がってしまったケースもあったと聞いています」。
なお、防除作業が遅れると、防除が完了するまでにかかる時間や農薬の量が通常時の倍になってしまうそう。防除作業の遅れは、非効率的な作業や余計な支出につながってしまうのです。
「とまとのしのはら」のこうした状況を見てきた篠原さんは、就農後は「作業遅れをゼロにする」をモットーに、作型を分散させた栽培や作業の省力化に取り組んできました。また、病害虫に関しては、早期発見と防除を心がけてきたそうです。
しかし、トマトは繊細な作物の一つ。多湿をはじめとする病害虫が発生する条件が整うと、高い確率で病害虫が発生します。さらには厄介なことに、発生する病害虫は年によって異なるのだとか。「今夏は、コナジラミ類による吸汁被害が目立っています。近隣のトマト農家でも多発しているようで、『今年はコナジラミ類が出ている期間が長い』といった声も聞かれています」と、篠原さん。
コナジラミ類は繁殖力が強く、短期間で広範囲に広がる性質をもちます。また、気温と湿度が上がるにつれ、そのほかの病害虫が発生する可能性も右肩上がりに。農作業において、目視での茎葉のチェックは欠かせないタスクの一つですが、今夏はとくにこまめに行う必要があると感じているそうです。
当然ながら、篠原さん一人ですべての圃場をチェックするのは難しいため、約6名いるパートスタッフの手助けが必須なのだとか。「パートスタッフに一つ一つの畝を見てもらい、トマトに食害や変色などが見られた場合は、異常の特徴と発生場所を知らせてもらっています。その後、僕がその場所へ行って病害虫の名前を特定する、という方法をとっています」と、篠原さん。しかし、異常の発生場所が複数になる場合は特に、確認作業に時間と手間がかかってしまいます。こうした現状の改善に役立つツールが、「エクスペスツ」です。こう、篠原さんは続けます。
「パートスタッフに『エクスペスツ』を使って病害虫の名前を特定してもらえれば、僕が異常のあった場所に行って確認する回数はかなり減らせるはず。また、発生した病害虫を抑えるための行動にも、素早く移れると思います」。
病害虫を見つけたら、その場で名前を特定できる「エクスペスツ」。その有用性について、「小林菜園」の小林柾德さんは次のように語ります。
「農業系の学校を出ていたとしても、現場で3年ほど経験を積まないと、圃場で発生した病害虫の名前はなかなか分からないもの。経験の浅い農家にとって、その場で病害虫の名前を特定できる『エクスペスツ』は、頼りになるアプリだと思います」。
小林さんは、農業大学校でトマト栽培を中心に学び、約4年前にお父様が経営する「株式会社小林菜園」で就農しました。「小林菜園」は2019年に、高度な環境制御技術が採用された、大規模な低コスト耐候性ハウスを導入。この結果、生産コストの削減や総生産量の向上を実現した、注目の農場です。また、「小林菜園」には今年、トマト栽培に対して意欲的な20歳の青年が入社したそうです。
小林さんによると、栃木県内では、意欲的な若手農業生産者の存在が目立っているそう。現在、小林さんが会長を務めている4Hクラブ(農業青年クラブ)には、200名以上の若手農業者が所属。クラブの活動として、勉強会や交流会を実施するほか、各々の研究成果を発表する大会に向けた準備などを行っているのだとか。今後の4Hクラブの活動に対し、こう、小林さんは期待を込めて語ります。
「新型コロナの影響で、農家同士でなかなか交流できない期間が3年ほど続きました。今年からは、クラブ員同士の繋がりを強めるべく、勉強会や交流会を積極的に開催していきたいです」
「4Hクラブのメンバーにも、ぜひ『エクスペスツ』を紹介したいですね」と、続ける小林さん。圃場で役に立つのはもちろん、病害虫に関する知識を増やすきっかけにもなるのが「エクスペスツ」。若手農業経営者の方にも、ぜひ積極的に使ってほしいツールです。
昨年、「エクスペスツ」にログイン特典機能となる、診断履歴の保存・確認と農薬検索の機能を追加されました。診断履歴の保存・確認機能を活用することで、圃場での病害虫の発生記録が明確に残せるように。翌年の栽培開始時などに、過去に発生した病害虫を確認できるため、発生予測や対策にスムーズに取りかかれるはず。
「また、新しく搭載された農薬検索機能は、作物と発生した病害虫より農薬を調べるだけでなく、使用方法、使用期間、系統などの条件を加え、希望に沿った農薬が即座に表示されることができます。農薬散布においては、病害虫の防除の進度や病害虫の発生状況を確認しながら、効果的な防除の実践につなげるために、系統が異なる複数の農薬をローテーションで散布するのが一般的。
「エクスペスツ」の農薬検索機能を利用すれば、系統が被らない農薬を簡単かつスムーズに選択・購入可能。結果として、農薬代の削減にもつながります。篠原さんも「農薬選びには、意外と手間がかかります。『エクスペスツ』の農薬検索機能があれば、楽に、なおかつ自分が求める農薬が選べそうです」と、興味津々の様子でした。
篠原貴大さんhttps://www.instagram.com/tomato_no_shinohara/
「普通においしいトマトを育てる」という目標を掲げ、酸味と甘みのバランスの良さを追求しながら、トマトを生産。父とともに経営する「とまとのしのはら」のトマトは、子どもがいる家庭でも好評で、「子どもがパクパク食べる」といった感想が上がっているそうです。また、「とまとのしのはら」は、2018年に農林水産大臣賞を受賞しています。
小林柾德さん
現在、「株式会社小林菜園」の「姿川ハウス」場長として、トマト栽培にあたっています。小林さんの地域にかける思いは強く、「『小林菜園』の周辺では、高齢を理由に栽培を辞めていく農家が増えつつあります。今後、そうした農園を引き継がせてもらうことも視野に入れながら、さらに技術や経営能力を身につけていきたいですね」と語ります。