
AIやIoTといった最新テクノロジーが、農業の現場でも使われています。それらのテクノロジーは、現場でどのように使われているのでしょうか?
日本の農業は、いま労働力不足が深刻な問題となっています。
農林水産省の資料によると、日本における農業従事者の数は、1960年の時点では1,175万人もいましたが、2020年には136万人と、8~9割も減っています。
農業従事者の年齢構成を見ても、2010年は60歳代以下の農業従事者が110万人でしたが、2020年は67万人と、4割ほど減少しています。また、平均年齢が2010年は66.2歳でしたが、2020年は67.8歳になっています。つまり、農業の分野では、労働力不足と高齢化が同時に進行しているということがわかります。
農地面積が変わらず農業従事者が減少するということは、一人当たりの作業面積が拡大するということになり、農業従事者の負担はさらに増えます。とはいえ、農業の現場では人間に頼る作業や熟練者でなければできない作業も多いため、省力化も簡単にはできません。人手の確保が難しい以上、農業従事者の負担を軽減するためには、農作業の省力化が重要な課題といえます。
この課題の解決のために、農業とテクノロジーを掛け合わせた「スマート農業」に期待がかかっています。
スマート農業という言葉について、農林水産省では「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」と定義しています。農業の世界では、すでに田植え機やコンバインなど、一部の作業は機械化もされていますが、さらなるテクノロジーの導入を推し進めるのがスマート農業となります。
スマート農業によってもたらされる具体的なメリットとして、農林水産省の資料「スマート農業の展開について」では「(1)作業の自動化」「(2)情報共有の簡易化」「(3)データの活用」の3点を挙げています。
(1)の「作業の自動化」とは、テクノロジーにより作業を自動化することで、人手を省くことを指します。具体的には、無人で走行するトラクターや田植え機、水田の水管理を自動制御するシステムなどです。
無人走行するトラクターや田植え機は、圃場内はもちろん、隣接する圃場間の移動も、遠隔監視下にて無人走行を行うことが可能です。農道の幅員や障害物を認識する機能も備えているため、危険を検知した際には緊急停止し、遠隔で監視者に通知します。
農作物を自動で収穫するロボットの開発も行われています。このロボットでは、収穫に適した時期の作物をAIが自動で認識し、最適な収穫経路、収穫順序をAIが判断することで、高速かつ高精度での収穫を可能にします。
(2)の「情報共有の簡易化」とは、作業の記録をデジタル化・自動化し、熟練者でなくても生産活動ができるテクノロジーのことです。
たとえば、熟練農業者の“匠の技”をスマートグラスで撮影し、AIで作業内容を解析、その結果を新規就農者が装着するスマートグラスに投影して作業のポイントを示す、というのもこれに当たります。
(3)の「データの活用」とは、ドローンや衛星によるセンシングデータや気象データを解析することにより、農作物の生育や病虫害を予測、対策を行うというものです。ドローンが空中から撮影した画像を分析し、害虫被害がある位置にピンポイントで農薬を散布することが可能になります。
ここで挙げた例は、すべて日本国内で商用化、あるいは実証実験が行われたものとなっています。スマート農業はすでに日本の農業を変えつつあります。
今後も農業においては人手不足が続くことが予想されますが、それをカバーする技術が続々と登場しています。農業従事者はこうした技術を積極的に取り入れ、同時に企業側も、農業従事者の手助けとなるような製品やサービスの開発に挑戦していくべきといえるでしょう。